青い花
ちょうど画家や音楽家が目や耳という外にある器官を心地よい感覚で満たすのに対して、詩人の方は心情という内にひそむ聖域を、不思議な快い想念で新たに満たしてくれて、わたしたちの内に秘められたあの神秘の力を思いのままに刺激して、言葉によって未知の素晴らしい世界を知覚させます。――『青い花』ノヴァーリス(青山隆夫訳)
15年くらい前に買って書棚に差しっぱなしにしていたもの。今頃読んだ。
青年詩人ハインリヒの魂の遍歴を描いた、いわゆるドイツ教養小説の系譜なのだが、ゲーテやトーマス・マンのそれとはかなり趣を異にしている。
成長物語というよりは思想・哲学に近く、小説技法に囚われないさまはむしろ散文詩のようである。
想像力の翼は高みを目指して翔け、壮大で神秘的な世界を描き出す。
詩人の夢と理想の象徴である“青い花”に、長い旅の果て、ハインリヒはようやく廻り逢う。
その意味するところはつまり、詩の力による「可視の世界と不可視の世界との永遠の結合」だろう。
まばゆいほどに清冽な、ノヴァーリスの思想の結晶のような小説。
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