落下の王国
今月2本も映画館で映画を観ている! すごい。
なにしろ去年なんて年間1本しか観に行ってないので…。
でも、この作品とか『12人の〜』とか観るとつくづく思うんだけど、やっぱり映画は映画館で観るのがいいですね。
さて『落下の王国』、なんといっても映像美が圧巻だった。
観る前から相当愉しみにしてたんだけど、実際スクリーンに映し出された映像はまさに“筆舌に尽くしがたい”美しさ。
オレンジ色の砂丘と真っ青な空、海を泳ぐ象、神秘的な宮殿の完璧なシンメトリー、と夢の中に出てきそうな風景が次から次へと展開してゆく。
そこに乱舞する色彩の鮮やかなことといったら、本当にこの世のものとは思えないほど。
安っぽい映像がひとつもないんだよね。眼福でした。
出てくる風景がどれも壮大で非現実的に美しいもんで、小さな島国の住人である私は「これってCGだよね」と思い込んでいたのだが、驚いたことにCG一切なし、すべてロケ撮影なのだそう。
す ご す ぎ る !
ロケ地は、インド、南アフリカ、イタリアやバリ等々、世界各国に及ぶそうで、監督の苦労とこだわりが察せられます。
ストーリーは、自殺願望のある青年が少女に語る物語を軸としていて、おとぎ話ともファンタジーともつかぬ内容になっている。
しかしながら、青年の語る物語に整合性はなく、よってカタルシスもない。
ただ心のあるがままに、ある時は冒険活劇として、ある時は救いのない悲劇として、語られてゆく。
最終的には聴き手である少女の力によって、青年の物語は軟着陸を果たし、彼自身もまた暗闇を抜け出すのだが、このクライマックスが今ひとつ真に迫ってこなかった。
少女をはじめとして役者の演技はみな素晴らしいんだけど。「ドラマ」としてはやや微妙。
青年の背景や人物像が曖昧すぎたために、彼の物語の輪郭もぼやけてしまい、結果的に普遍性を持たせられていないように思った。
設定自体は箱庭療法のようで面白いと思うんだけど、でもその、個人の内へ内へと向かうところから観客を巻き込む普遍性を生み出すことはまた別問題で、そして、それが一番難しいことなんだろうと思う。