8 Mile

8 Mile [DVD]


DVDのジャケット、カッコいいな。
歌ってるエミネムもカッコよかった。ただし、ふだんはそのへんにいるただのお兄ちゃんなんだけど。
そう、鑑賞前の予想を裏切って、エミネムにはスーパースターオーラありませんでした。
目尻がちょっと垂れてて口元もしまりがなくて、マッチョというより優男。友人達からは“ラビット”と呼ばれている、なまっちろい兄ちゃんだった。
しかし、そんな優しげな青年がマイク握ったとたん、歌い出したとたん、すごいオーラを発するんですよ。
観客を煽って興奮のるつぼに叩き込む、その才能、迫力たるや。これぞカリスマなんだと思った。

主役はエミネムでもありヒップホップ音楽でもあり、という映画だと思う。
ヒップホップってこんなにすごいものだったのか、と自分も含め、観た人はみな感じるんじゃないだろうか。
ただリズムに言葉を乗せればいいってもんじゃなくて、いかに巧みに韻を踏むか、機知を交ぜるかってことが問われる、相当難易度の高い言葉遊びだと思った。
いや、「言葉遊び」という云い方はふさわしくないかもしれない。なにしろ歌詞(リリック)が相当過激で攻撃的なので。

調べてみたところ、ヒップホップの成り立ちにはストリートギャングの抗争も関係しているようで、攻撃性はそのバックボーンとしてあるのかもしれない。
作品中でも、バトルと称する一対一の対戦形式で歌われており、容赦ない罵詈雑言をお互いに浴びせあう。
まあ、はっきり云って放送禁止用語の嵐なんだけど、この攻撃性は肉食人種ならではだなあと感心した。
そしてそれ以上に、あれだけ言葉のパンチを浴びせられてもへこたれない逞しさに感動した。
でも、これがメディアの波に乗ってメジャーになっていくと、いずれ去勢されたようになっちゃうのかな。
過激だからいいってわけでもないが、ヒップホップ本来の反骨精神とショービジネスの世界って相容れないもののような気がしなくもない。

映画の中で何人ものラッパーたちがリリックを競い合うのだが、語彙、センス、言葉の流れと響き、すべての点において、やはりエミネムは頭抜けている。
天才って、どんな素人にも一瞬でその作品の素晴らしさを理解させられる人だと思うんだけど、エミネムはまさにそう。
テーマ曲の“Lose Yourself”とか、DVD観た後で聴くとなんか病みつきになりそうな感じ。
カッコイイよね、この曲。

バスの中や夜の部屋でエミネムがひとり黙々と詞を書くシーン、ここだけ空気の色が違ってて印象に残った。
何か静かなオーラが出ていた気がする。青白い感じの。
それと、幼い妹の面倒を見るシーンも微笑ましくて好きでした。この妹がまた可愛いんだな。
母親や友人、職場の同僚たちもそれぞれ味があってよかったと思う。
ジミー(エミネムの役名)は友達に恵まれてるなあ。
ところで、出てくる白人女性が見事にみな金髪だったのには笑ってしまった。まあ男の映画って感じだからなあ…仕様ですかね。

というわけでストーリー自体はあっさりしたものだったけど、面白かったです。満足。